「 なぁ、」訝しげで、拗ねているようで、不安そうで、そんな日向の声が、後ろからついてくる。振り切るように歩調を早めてみても、日向は私の心境などお構い無しに私のスピードに合わせてぴょこぴょこ歩き続ける。「なぁってば」途切れることのない彼の呼びかけは、まるで聞こえていないかのように振る舞う私の耳までちゃんと届いている。私だってこんな態度を取りたい訳じゃない。なのに、気がついたら足が動き出してて、今も、どんな表情をして、何を言えばいいのか分からないのだ。日向を目の前にして、平静なんて保てる訳がない。だから気持ちが落ち着くまでちょっと放っておいてほしいなんて、こんな申し出、聞き入れてくれないんだろうな、日向は。


「 あれっ、 ……なんだ、かお真っ赤じゃん」


追いつかれないよう素早く歩くことに集中しすぎて、いつの間にか歩く速度を速めた日向が横から私の顔を覗き込んでいることに、私は気付かなかった。不意をつかれて思わず歩みを止めれば「やっとこっち見てくれた」と日向は半ば呆れたように笑った。


「ずっと黙ってるから怒ってんのかと思って焦ったじゃんかよ、もー…」


はああ、と安心したように息を吐き出す日向を見て、そうか、私は自分にいっぱいいっぱいで日向を不安にさせてしまっていたのか、と今更ながら気付く。おまえも照れたりすんのな。じゃ、俺と一緒だな。なんて言いながら、日向がへへっと嬉しそうに肩を竦めて笑うから、私はますます何も言えなくなってしまう。「メーワクじゃないって、思ってもいいんだよな?」確かめるように私の顔色を窺う日向に、言葉にはできずに黙ってこくりと頷くと、そっか、と言って日向は口端を上げた。「じゃあ、今度はちゃんと繋ごーぜ」 ホラ、と差し出された掌を、私は強く握り締める。今度こそ、そう簡単にはほどけないように。
COLOR PALETTE #03 | Syouyou Hinata