不意に少しだけ身を屈めた椿くんに、奪われるようにキスをされた。唇を離す瞬間に至近距離で視線を交えた椿くんの真っすぐな目が、普段の彼らしからぬ熱と鋭さを纏っていて、その瞳に射抜かれたように呆然としていれば、少しだけ距離を空けた椿くんが突然我に返ったのか「  …っ…!」と口をぱくぱくとさせて動揺し始めた。先程までとは打って変わって顔を紅く染めながら「あ、すみませっ…、つい、」と困惑する彼の様子を眺めながら、見ていて飽きないコだなぁと思わず笑みが零れる。

確かに驚きはしたけど、謝ったりなんてしなくていいのに。ばつが悪そうな椿くんに手を伸ばし、その唇にそっと触れると、彼は一瞬驚いたように肩を揺らしたけれど他には身じろぎ一つせず、疑問符を浮かべたままその真っすぐな瞳で私の目を見つめ返した。


「 ごめん、口紅ついちゃったね」
「 ……そんなの、気にならないです。 …それより、」


からかうように軽い口調で述べたはずが、返ってきた椿くんの声色が予想していたよりもずっと落ち着いていて、どきりと不意をつかれた。気がつけば彼の唇に触れていた私の手はさらに椿くんの掌に捉えられている。なんで今まで忘れていられたんだろう。どれだけ表情のころころ変わる無邪気な少年だったとしても、彼は相手のゴールを奪う選手なのだ。「……それよりもう一回、してもいいですか」私の目を覗き込んだまま、彼が囁くように言う。誰が見ても明らかに、いつの間にか主導権を握ってるのは彼だった。
COLOR PALETTE #22 | Daisuke Tsubaki