確かに驚きはしたけど、謝ったりなんてしなくていいのに。ばつが悪そうな椿くんに手を伸ばし、その唇にそっと触れると、彼は一瞬驚いたように肩を揺らしたけれど他には身じろぎ一つせず、疑問符を浮かべたままその真っすぐな瞳で私の目を見つめ返した。
「 ごめん、口紅ついちゃったね」
「 ……そんなの、気にならないです。 …それより、」
からかうように軽い口調で述べたはずが、返ってきた椿くんの声色が予想していたよりもずっと落ち着いていて、どきりと不意をつかれた。気がつけば彼の唇に触れていた私の手はさらに椿くんの掌に捉えられている。なんで今まで忘れていられたんだろう。どれだけ表情のころころ変わる無邪気な少年だったとしても、彼は相手のゴールを奪う選手なのだ。「……それよりもう一回、してもいいですか」私の目を覗き込んだまま、彼が囁くように言う。誰が見ても明らかに、いつの間にか主導権を握ってるのは彼だった。
COLOR PALETTE #22
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| Daisuke Tsubaki