そんなうまそうに食ってくれるんやったら俺も焼いた甲斐があるわ。もぐもぐと焼きたてのお好み焼きを頬張る私を見て、シゲは頬杖をついたままにやにやと笑みを浮かべた。「……笑ってますけど、それ褒めてる?」「褒めとる褒めとる、相変わらずの食いしん坊さんやなぁって」「……」「んなコワイ顔せんといてって。ほうら、こっちのモダン焼きも焼けたで〜」「…この流れで食べ物に釣られるのすごい癪なんだけど、めちゃくちゃ美味しそう」「ふは、せやろ。大阪もんの腕をなめたらあかんで」仕上げに上に乗せられたソースが、一部鉄板まで滴って、じゅうじゅうと食欲を擽る匂いがまた広がる。シゲによって手際良く切られたそれらを皿に運び、さらにふぅふぅと冷ましながら口へと運ぶ。美味しい。

思い切ってシゲを誘って良かったなぁ、とそのときのやりとりを思い返す。「どうしても美味しい粉もんが食べたいんだけど、シゲ一緒に行かない?笑」という私の突拍子の無いメールに、「ええで(^o^)b」と二つ返事を返してくれたシゲ。「えっ、いいの!?」「なんでやねん(笑) 行きたいんやろ?行こうや」そうして唐突に決行されたこの食事、最初は二人きりだということに若干緊張もしてたんだけど、シゲと一緒にいるのは楽しいし、肩肘張らずに済んでラクだし、お好み焼き美味しいし。「なぁ、」ある程度お好み焼きを堪能したあと、シゲがふと口を開く。「んー?」私は返す。


「で、なんで今日は俺を誘ってくれたん?」


息が止まる。え、なんで、って。シゲのほうを見ると、彼はにやりと口端を上げながらまっすぐな瞳で私を見据えている。今まで追求されなかったし、私は今日は楽しい気分のまま終わると思ってて、でも、シゲはそれだけで終わらす気は無いらしい。ほ、ほら、だってシゲ関西人だし美味しいお店知ってそうじゃん。誤魔化すようにそう告げると、ふーん?まぁええけど。と彼は残りのお好み焼きをつつく。追求を逃れたことに胸をなでおろしたのもつかの間、「俺はおまえやから誘いに乗ったんやけどなぁ」という呟きが聞こえてきて、つい私の手が止まる。そんな、誘導尋問みたいなの、ずるい。


「……それは、また誘ったら来てくれるってこと?」
「その質問は、また誘ってくれるっちゅう意味か?」


質問に質問で返すのは卑怯だと思う。こちらも慣れない駆け引きに乗ろうとしたのに常に一枚上手なのはシゲの方で、むかつく。完全にこっちの反応見て楽しんでる。二の句が継げずに黙り込んでしまった私を見て、「はは、すまんすまん。舞い上がってつい意地悪言うたな」とシゲはくしゃりと目を細めて笑った。「俺は今日めちゃくちゃ楽しかったで。ありがとうな」そう言って、ふわりと空気を緩めて笑う優しい表情に、どきりと心臓が揺らめいて、それもまた、むかつく。見てろよ、そのうちシゲも吃驚するような正面突破な愛の告白をしてやるんだから。
COLOR PALETTE #07 | Shigeki Fujimura