「おっはよ!」不意に顔を覗き込まれ、思わず肩が跳ねた。そんな彼をじろりと睨み「…剣太郎は迷ったりすることなんてないんだろうね」と当たれば、失礼な、とでも言うように彼は口を尖らせた。「僕がどんだけ勇気を出して君に話しかけてると思ってんの」
(葵剣太郎)
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賭けをしようか、とサエは言った。君が勝ったら望むことなんでもしてあげる。俺が勝ったら、…そうだな、君が今思ってることを正直に言ってもらおうかな。「…どちらにせよ甘やかすつもりでしょ」思わず反論すれば「バレたか」と彼は微笑み肩を竦めた。
(佐伯虎次郎)
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「俺はお前に泣かれるとどうしたらいいか分からなくなるんだ」だから頼む、泣き止んでくれ、と彼の無骨な大きな掌が私の頭を撫ぜる。逆効果だよ、ばか。流れ続ける涙に彼はすっかり困惑顔だ。「…俺はどうしたらいい」その問いに一体どこまで我侭が許される?
(黒羽春風)
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こっちはどれだけ必死だと思ってるの。ムードもへったくれもない毎度の駄洒落を零しかけたその口を思わず唇で塞ぐと、彼は楽しそうに目を細めてキスに応じた。ダビデは厄介だから気をつけろよ。バネさんの忠告が今更ながら脳裏を過ぎったけど、もう遅い。
(天根ヒカル)
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ほんと、意地っ張りなのね。呆れたように困ったように笑ったいっちゃんが私の手を握る力を強くする。違うよ、泣いてなんか。鼻を啜りながら否定を述べれば、べつに泣いてるなんて一言も言ってないのね、とまた笑われた。いい加減認めようか。この涙も、恋も。
(樹希彦)
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「こういうとき髪が邪魔になるんだ、知らなかったや」楽しそうに喉を鳴らしながら彼は私の首筋や鎖骨に口付けを落としていく。覆いかぶさった彼から垂れる黒髪が私の身体に拡がって、くすぐったいけど嬉しくなった。どうかそのまま私の全てを覆い尽くして。
(木更津亮)
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