「 変な触り方すンじゃネェ、」
そう言って靖友は表情を少しだけ歪める。そんな靖友を見上げながら、わざとだよ、と言えば、チッと舌打ちと共に「 オマエは黙って喘いでろ」という台詞が降ってきて、手首を掴まれたと思ったらそのままベッドに押し倒されていた。黙ってるというのと喘ぐというのは矛盾してるんじゃないかなぁ、とか、彼女に対してその言い方はどうなんだろうなぁ、とか思いながらも、そんなふうに口は悪いのに私に触れる掌はやけに優しくて、思わず頬が弛む。劣情に揺らめく彼の瞳は鋭くて獰猛で、だけどたまに不安そうな色をちらつかせるから、あぁ、このひとはほんとうにやさしいひとなのだと、そして今このひとのこの表情を知っているのは私だけなのだと、そう思ったらひどく興奮した。
「……ねぇ靖友、愛してるよ」
「ハァ!? …バァカ、気味悪ィ」
気味が悪いとは失敬な。だけどそんな彼の応対も彼なりの照れ隠しであることを私はもう知っている。覆い被さっている彼の華奢な身体を包むように少し背中を浮かせて彼のうなじに腕を回せば、彼は小さく息を吐く。直接は顔が見えない体勢であっても、彼がほんの少しだけ泣きそうな表情をしているということも、私は知っている。だってきっと私もいま同じような表情をしている筈だから。確かめる術は、無いけれど。
「やっぱ趣味悪ィな、」
「趣味が悪いのはお互い様だよ、靖友」
「 ……ハッ そうかもナ」
小さく笑った靖友がゆるりと上半身を起こして、ようやく顔と顔を見合わせるような体勢になると、ニヤニヤすンな、ウゼェ。と言いながら靖友は私の頭を掴んで、ぼふん、と枕に押し付けた。にやにやしてるのもお互い様だよ、靖友。それは口には出さずに心の中でそっと呟く。先程私の頭を掴んだ靖友の掌は頬を撫でてから鎖骨をなぞって下へと降りていく。私の知りたいこと、靖友の知りたいこと、たくさんある事柄のうち、確かめる術があるものを私は知っている。たとえば今。靖友の指。靖友の瞳。私に愛なんて説いてくれなくていいから、もっともっと揺らめいて、ひとさじの甘さに溺れていたいから。